4月15日
5時ごろに目が覚め、外を見ると雨が降りそうだったので急いでテントを撤収する事にした。
間も無く小雨が降り出し、テントやレインフライなどが濡れてしまったが、仕方がないのでとりあえず目的の日本一の石段に向けて歩き出す。

昨晩も見えた吊り橋。天気の良い日に渡ったら気持ちが良さそうである。


もうすぐオープンする道の駅である。
なかなか大きくて立派であり、オープン後は賑わうのではないかと想像できる。

たけのこが、生えたばかりの黒い皮に包まれた状態から皮が剥がれていく状態のものを見かけた。きれいな緑色がチラッと見えている。皮は自然に上から向けていくのかと思っていたが、確かによく見てみると下から向けるような皮の付き方になっている。とても興味深い。
小雨の中、石段のある場所を目指して歩いていく。途中、この辺りを毎朝散歩していると言うおじいさんに出会う。年も90歳近いと言うのにとてもお元気である。やはり毎日体を動かすことが元気の秘訣なのだと感じた。

そうこうしているうちに、石段へ行く人たちが利用するであろう駐車場へと到着。平日、かつ朝が早い上に雨なので誰もいない。
どこかで座って朝ごはんを食べたかったのだが、生憎の雨なので奥に見えるトイレの裏で立ちながら雨をしのぎ、持ってきたミックスナッツと大きめの焼き芋をたくさん食べ、石段を登る前のエネルギーをしっかりと補給。

「日本一の石段」の看板が見え、気分が上がる。果たして12キロの荷物を背負った自分が3333段の石段を登り切ることができるのか不安な部分はあるが、歩けるところまで歩いて行って無理そうなら降りてこようと思った。

歩いていると、こちらのカフェの方のご好意で無料の休憩スペースが設置してあった。「ここで休ませてもらってさっきの朝ご飯を食べれた〜」と思ったが、事前に知ることなどできない。
もう少し歩いて行くと、(個人名が書いてあるため写真を撮らなかったが)石段を何回登ったかの番付が書いてあった。多い人だと5千回以上も登っているので、驚いた。
1日1回登って10年間毎日登っても5000回に満たない。凄すぎる。


石段の入り口に差し掛かり、説明版があった。休憩所やトイレの場所などが書かれている。さすが日本一の石段である。

石段のふもとに注意事項が書かれていた。「救急車両は次の階数にしか行けません。」の一言がなにかこう山登りをする前のような気分にさせてくれる(自分は全然登山はしない人間だが)。何かあっても簡単には助けてもらえませんよ、と言う注意喚起である。
気を引き締め、そしてリュックのベルトも締め、石段を登り始めた。

登ってみると、最初の数十段は足取りが軽く、これは行けるのではないかと感じたが、50段目くらいからは疲れを感じてきた。止まって数回息を整えては少し登り、また止まって数回息を整えて登っていく。最初の100段目に到達。
この奥に見える建物に記帳をするノートが置いてあり、日付や名前、気持ちなどを書き残すことができるようになっている。見てみると、今日は誰もまだ登って降りてきていないようだ。朝早いのもあるが、雨なので誰も登っていないだろうと思った。

息を切らしながら、数十段登っては息を整え、また登っては息を整えることを繰り返す。400段目に到達。まだまだ先は長い。
そうしていると、上から降りてくる年配の男性に会った。話を聞いてみると、もうこの石段に16,000回以上も登っていると聞いてびっくりした!
1日1回登って毎日続けても50年近くかかる!そう思ってると、1日に何回も登る日もざらにあるとの事であった。一番多い日で10回以上残った日もあるとのことで、これまたびっくり。
上まで登るのに1時間ほどで行けるとのことであった。世の中にはすごい人がいるものだと改めて感じた。

この後も、後ろから登ってきた年配の男性とすれ違い、少しだけお話を聞いた。この男性も、毎日ではないがこの石段を登っているとのことで、ペットボトルのお茶一本だけを持って登っていた。さすが何回も何回も登っている人である。自分では全然追いつけないペースで登って行く。
とりあえず自分はペースを変えず、登っては息を整え、また登っては息を整えながらようやく700段目に到達。まだまだ上はある。

何とか頑張ってゼーゼー言いながら、1000段目に到達。休憩ポイントがあったが、とりあえずそのまま歩き続ける。

どれだけ足を進めて行っても、上を見上げると階段が果てしなく続いている。
これはもう本当に修行である。

何とか頑張りながら、1600段目に到達。もう少しでようやく半分だと自分に言い聞かせ、足を進めて行く。

水600ミリリットルのペットボトルを飲み干してしまったので、昨日道の駅で買っておいた予備の水を取り出す。神の力を少し借りることした。やはり霧島の水は甘くて美味しい。他のメーカーの霧島の水もこの前飲んでみたが、それも甘かった。
今日はこのお水を飲んで神のパワーを少しもらえた感じがし、また歩き始める。
これまた頻繁に登っているであろう年配の女性が後ろからやってきて、挨拶をした後で颯爽と自分を追い抜いて行く。
皆さん本当にすごい。とりあえず自分は自分のペースを乱さずに登っていく。


途中、石畳が現れた。周りが霧がかっていることもあり、何か幻想的な雰囲気に感じられる。太ももに疲労が溜まっているのであろう。この石畳ですら歩くのがなかなか大変に感じる。
なんかドラゴンボールに出て来そうな修行の場のようにさえ感じられる。

ゼーハーゼーハー言いながら、ようやく2000段目に到達。太ももの疲労がかなりあるが、まだ歩けそうなので足を進めて行く。
霧がかっている雰囲気がまた神秘的ではあるが、疲労感がとにかく凄い。

無心で、登っては止まり上っては止まりを繰り返していく。2600段目に到達。もう少しである。

そうして、一歩一歩足を進めていくと時間はかかったが3000段目に到達。
ここまで来ると完登は間違いなくできるとわかり、もう少しだと自分に言い聞かせ足を進める。
そうしていると、最初の頃に出会ったペットボトルのお茶を持った方がちょうど上から降りてきて、もう少しだよ〜頑張ってね〜と励ましてくれた。有難い。

ついに上が見えてきた。ここまでかなり大変であったが、やっと登りきることができる〜と自分を鼓舞し、登って行く。

ようやく上まで到達。時間を見ると、ちょうど90分かかっていた。とてもハードな90分であったが、達成感がすごい。やはり辛いことがあった後の達成感と言うものはとても大きい。
嬉しさに浸っていると、この更に先にお寺があることに気づく。愕然としたが、せっかくなので行くことにした。


石畳に沿って歩いて行き、途中にある東屋からの素晴らしい景色も眺めながら、足はとても辛いが歩いていく。

ようやくお寺に到達。参拝をさせていただき、来た道を戻る。
途中、スマホの電池が切れてしまった。
昨日買った乾電池式充電器の乾電池も、全て使い果たしてしまったので充電の手段は無い。ここからはスマホなしで石段を降りて行き、この山からも降りて行かなければならない。ただ食料(ナッツ)はあったので、水さえ確保できれば死ぬ事は無いだろうと、特に焦らなかった。
先ほどの東屋に戻って来ると、この辺りは風がとても強く吹いており、これはテント一式を乾かすのにちょうど良いのではないかと思い、そうすることにした。
1時間弱ほどかかったが、グランドシート・テント・レインフライ・ザックカバー・折り畳み傘をすべて乾かすことができた。
ただ、1時間弱ず〜っと強めの風に当たっていたので、汗をかいていたほど熱かった身体がすっかり冷え切ってしまった。
とりあえず身体を温めなくてはと思い、石段を降りることとした。
帰りの石段下りも、最初こそはペースが早く「これならすぐ下まで降りられるのでは」と思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
これまた太ももへの負担が半端なく、一歩一歩降りる旅に自分の体重+12キロのリュックの重さが太ももへとのしかかり、だんだんと太ももが辛くなってくる。
登っている時と同様、数十段降りては一息二息整え、また数十段降りては息を整えるを繰り返して行く。登りよりは遥かに早いペースで降りてはいるが、やはり降りるのも一筋縄ではいかない。
楽しそうに会話をしながら楽に降りて行く数人の大学生っぽい男性グループにも颯爽と追い抜かれる。
半分ほど降りてきたところでようやく身体が温まってきた。
そうして頑張りながら、何とか下まで降りて来ることができた。200段目位のところにあるノートにも記帳し、自分の気持ちを書く欄には「諦めないことの大切さを改めて実感しました」と書いた。
石段の入り口近くにある神社にて、登りきったことに対するお礼を伝え、その横にあった休憩所にて木の椅子に座らせてもらう。
久々に座ることができた〜と思った直後、座ったまま寝てしまっていた(背もたれの上に頭を置いて上を向いた状態で)。余程疲れていたのであろう。体感で30分〜40分ほど寝ていたと思う。
短い時間の仮眠ではあったが、意外にすっきりした。足の疲労がとてつもないものではあるが、とりあえず町に向けて山を降りなければならないので、自分に喝を入れて歩き始める。
スマホが使えないので車やバイクの運転手用の青い看板を見ながら、熊本市方面へと足を進める。熊本市まで23キロと言う看板を見て、かなり遠く感じるが行くしかないと思い頑張って歩く。
途中、いきなり雨が降ってきたと思ったら、スコール並みの大雨になった。ザックカバーやカッパを取り出して着用しようとしている間にずぶ濡れになってしまった。まぁ仕方ない。引き続き歩いていく。
そうして2時間ちょっとほどで甲佐町に着いた。
百均も入っているスーパー「マルエイ」で乾電池と晩御飯を購入。
早速、お店の前のベンチ(喫煙スペースを使わせて貰って申し訳ないが)で乾電池を使い、スマホを充電しつつ晩御飯を食べる。


やはり石段の登り降りはカロリーを消費するのであろう。ご飯がとにかくおいしい。
買った乾電池を使い切り、スマホの充電が30%ほどまで回復した。見てみると、先日球磨川沿いを歩いていた時に知り合ったHさんから電話が来ていた。
電話をかけてみると、どこまで歩いたか、元気で歩いているか気になったので電話したとのことであった。これはとても有り難かった。特にこのタイミングで電話をしてくれたことがとても励みになった。
今日はここまででもう20キロ歩いており、それに加え、3333段の石段の登り降りまでしている。更にここから充電しながら寝れるところを探しに熊本市まで20キロ歩かなければならない。全身の疲労もあり、かなり気が重くなっていた。
Hさんとのお話で元気が出たので、頑張って熊本市へ向けて歩き始める。
石段の登り降りの際の身体への衝撃からか、いつも以上に肩が痛い。加えて、足の皮もかなり痛くなっている。30〜40分ごとに道端にリュックを置いて小休憩を取らざるを得ないが、頑張って少しずつ歩いていく。
そのうちに日も暮れて真っ暗になってきたので、ライトを照らしながら歩き続ける。
たとえ数分の休憩でも身体は少し回復するのでまた歩けるが、歩き始めの5分ぐらいはとにかく足の皮が痛い。5分くらいすると慣れてくるが。
だが30分も歩いているとリックの重みで肩が痛くなって来るので、また小休憩を取ることとなる。何度もそうやって休みながら何とか熊本市へ到達。
夜も23時位だったので、充電できる場所としてインターネットカフェを考え、マップで探してみると、快活CLUBなるお店があるのが分かり、そこへと向かう。
ヘトヘトになりながら、やっとの思いで到着。受付の人にはじめての利用であることを伝えると、身分証の提示を求められた。前回、自遊空間と言うところで免許証の写真をスマホで提示して会員登録ができたので、同じようにしようとすると免許証の原本がないとダメだと言うことであった。
ショックではあったが、これは迂闊であった。前回のお店で問題なく会員登録ができたので、こちらのお店でも大丈夫なものだと思っていたが、同じ系列店ではないのでシステムももちろん違った。
仕方なく店を出て、どうしようかと途方に暮れる。もう一度マップで検索してみると、なんとここから40分ほどの距離に自遊空間があることが分かり、これは有難いと思いそこを目指すことにした。
疲労の限界は越えているが、やっとの思いで到着。この時もう既に0時を過ぎていた。自遊空間はチェックインやチェックアウトはすべて機械を通してセルフでするシステムとなっているので、入り口の機械を使いチェックインをしようとする。
すると、画面に表示されているブース(個室)がすべて利用中と表示され、愕然とする。
疲労もあったが、これは余りにもショックだったので2〜3分画面を見ながら突っ立ったままであった。
とりあえず諦めてお店を出ようと思い、画面の「戻る」ボタンを押して最初の画面に戻る作業をしていると、画面左下に「利用可能なブースを見る」のようなボタンがあるのを発見。
すべて利用中であるのはわかっているが、とりあえず押してみた。すると、なんと利用可能なブースがあるではないか!
先程のは機械のグリッチであったのか。しかし有難い。やっと充電&睡眠が取れる。
早速チェックインをし、ブースへと行きスマホを充電する。ここはシャワーもあるので、ありがたく浴びさせていただく。
ネットカフェでは漫画を読んだりデスクトップパソコンで映画を見れたりするのであるが、ブースへ戻って明日の予定を立てているうちにすぐ寝てしまった。
とても長い1日であった。
