歩き1人旅

歩き旅〜中国地方編〜 5/6

5月6日

夜中の間ずっと風が吹いており、何度もテントがバサバサと頭に当たっていたが、なんとか眠りに就く事ができた。
自分は登山の経験がほぼ皆無であり、山の高い所にてテントで寝た経験はないが、縦走登山をする人達が風が強い場所で寝る際などはこの様な感じなのであろう。なかなか過酷である。

そうして強風の中なんとか寝ていると、真夜中に酔っ払った男女数人が公園でブランコなどをしている音や声で目が覚めた。
こちらは勝手に公園で寝ているので、もちろん何も文句は言えない。
そのうち、酔っ払った女性の声で少し離れた所から、「え?なんでこんな所にテントがあるの?おーい!こんにちは〜!!おーい!あはは〜」と、大きめな声でこちらを呼んでいたので、自分はそのまま黙っていると、仲間の男性が「やめておけって!」と引き止めてくれた。とてもナイスな一言である。
その後は声をかけられる事はなく彼らは何処かへ行ったので、再び眠りに就く事ができた。

そうして5時半ごろには目が覚めたので、早めにテントを畳む事とした。
だが風が強いと、やはりテントを飛ばされないように畳むのもなかなか難易度が高いものであった。自然の力と言うものは本当に凄い。
そうして荷物をまとめて出発の準備をし、少しだけゆっくりした後で公園を後にしようと思ったその時、親子(父親、母親、小学生の息子)が散歩をしに来た。
お父さんが自分を見て「歩き旅ですか?」と聞いて来たので、「九州の佐多岬から歩いて来てます」と伝えると、なんとお父さんが九州出身の方であった。
そしてそのお父さんが「自転車旅をしている人も昨夜はここに泊まったんですよね。お知り合いですか?」と言うので、「???」と思い、「自分意外にもここで寝ていた人がいたんですか!?」と言うと、「ほら、そこに自転車がありますよ」と言うので見てみると、トイレに立てかけてある自転車があったので驚いた。

自分は昨日は夕方の早い時間からこの公園でウロウロしていた。その時からこの自転車があったのであろうか。全く分からない。
「でも昨夜ここでテントを張っていたのは僕だけだと思いますよ」と伝えると、お父さんが「その人はここで寝ていたんですよ」と指差した先はなんと、バリアフリートイレ(多目的トイレ)。
するとそのタイミングでガーっとその個室トイレのスライドドアが開き、その旅人が登場した。
その時に自分が感じた衝撃は凄まじかった。
その理由としては、その自転車旅の人が、昨日自分が道の駅の温泉の休憩所で爆睡した後にそのまま横になって休んでいた際、同じく休憩所にいた人であったと言う事も勿論だったが、自分があれだけ大変な思いをしてテントを張り、激しくバサバサしているテントの中で寝て、朝も強風のなかテントを頑張って撤収したと言うのに、その強風から身を守って安全に寝られる場所があり、それがバリアフリートイレ(多目的トイレ)であったと言う事である。
トイレで寝る、これは全く自分の想像の範疇から外れた行動であり、それを普通にやっている旅人がいると言う事実。
とにかく衝撃的であった。

聞くとその人は自転車で日本を巡っている旅人で、台湾の人だと言う。
だが日本語を少し話せると言い、それはお婆さんが日本語を話せるので日本語を小さい頃から聞いていたためであると言う。
なので日本語と英語を織り交ぜながらその旅人と会話をしていると、「コーヒー飲む?」と聞かれた。
聞いたところなんと、その人は台湾で開かれたバリスタの大会で優勝したチャンピオンであり、コーヒーを淹れる器具一式を持参していた。
そのお言葉に甘え、散歩をしていたその家族と共にコーヒーを淹れて貰う事とした。この旅人を以後、自分の中では「バリスタさん」と呼ぶ事にした。

バリスタさんは早速、コーヒーを淹れる準備にとりかかかった。
あのファミマの美味しい水「霧島の天然水」でお湯を沸かせ、その間に丁寧に豆を挽いている。
その職人とも言える技術を見ているだけで落ち着いた幸せな気持ちになる。
場所が多目的トイレではあるが全く気にならず(※風が強いため、やむなくここでコーヒを淹れている)、茶道ならぬ「コーヒー道」を体験させていただいているような気持になる。

勝手に顔出しで写真をアップさせていただきました

コーヒーを淹れて貰っている間に、バリスタさん・散歩をしている家族・自分でお話しをし、それぞれお互いの事などを聞いた。

ご家族は今休暇中で奥さんの実家に遊びに来ていると言い、夫婦で同じお仕事をされており、とても仲睦まじい感じの夫妻であった。お父さんは活発な印象の方で、色々な事に興味を持っていそうな人であった。
小学生の息子さんは優しそうな雰囲気を醸し出しており、バリスタさんのコーヒーを淹れる様子を父親のスマホと自撮り棒を使ってビデオ撮影していた。

バリスタさんは、過去相当辛い事があり、それが理由で世界中の人に愛を与えると言う10年間の世界旅に出ている最中であった。
今は7年目との事であり、自転車で世界を周っている凄い人であった。
話しを聞いているととても面白く、世界には色んな人がいるものだと再認識させられた。
このバリスタさん、旅先で出会った人にこうしてコーヒーを淹れていると言う。
そしてコーヒーを淹れて貰った人がお弁当を買ってくれたり、昨晩のように温泉に入れて貰ったり(確かに昨晩は年配の日本人男性と一緒に温泉に来ていた)してくれるため、旅費もほとんどかからずに今までの2ヶ月の日本旅で2万円しか使っていないと言う。
コーヒーを淹れて貰った人もこうしてバリスタさんとの国際交流を楽しめ、美味しいコーヒーを堪能でき、バリスタさんもまた自分のスキルを活かしながら日本の人たちとの交流をし、ご飯やお風呂代をカンパしていただけると言う、とても素晴らしいウィンウィンな形であると感じた。

ゆっくりとお湯を回しながらかけ、時折り湯気を手で自分の顔に煽り、匂いを嗅ぎながらコーヒーを淹れていく。
良い匂いが段々と漂って来る。ここがトイレであると言う事を完全に忘れさせる程である。

そうして出来上がったコーヒーを、そのご家族と一緒に試飲させていただいた。
自分は極度のHSPであるため、コーヒーが全然飲めない体質であり(カフェインを取ると激しい腹痛を起こしたり寝れなくなったりするため)、コーヒーの味の良し悪しが全くわからないが、バリスタさんのコーヒーは複雑でとても深みのある味のように感じられた。
ご夫婦も、美味しい美味しいと言い飲んでいる。さすが台湾のバリスタチャンピオン。おいしいコーヒーにより人に幸せを感じさせるだけではなく、それを丁寧に淹れる一連の流れと言うか作法を見せてくれる事により心が穏やかになる。極上のひとときを味わわせていただいた。

皆んなでお話しをしている間に、息子さんから貰ったりんごの飴玉。優しい、、

そうして至福のコーヒータイム味わった後、バリスタさんと親子と少し会話をし、それぞれ出発する事とした。
バリスタさんにインスタをやっていないのか聞かれたので、その場ですぐインストールをし、アカウントを作成。それを伝え、バリスタさんのアカウントと一家のお父さん・お母さんのアカウントを教えてもらい、相互フォローさせていただいた。
そうしてお別れの挨拶をし、それぞれ出発する。一家にはお茶を餞別で買っていただいた。心遣いが有難くとても温かい。

昨晩に続き風邪は強めではあるが、天気は良いので気持ちが良い。
旅をしていると、このような素晴らしい出会いがある。本当にありがたいことである。幸せな気持ちで心を満たされた状態で歩く。

心なしか景色もいつもより晴れ渡って見えるような気がする。

歩いていると体温が上がってきたので、先程のご両親に買っていただいた綾鷹。早速飲ませていただく。
茶葉の甘みがしっかりと感じられるおいしいお茶である。

砂浜・青い海・綺麗な空
天気が良いのもあるが、やはり今朝の交流が心に響いたのであろう。とても清々しい気持ちで足を進める。

遠くの島を眺めたり、

自然が作り出した美しい岩などを見ながら歩いて行く。

しかし海が本当に綺麗である。とても澄んだ色で、思わず「綺麗だな〜」と口に出る。

そうして歩いていると、軽トラックに乗った初老の男性が降りてきて、ガードレールから海を眺める。
「綺麗だねぇ、海」と言い、自分も「本当綺麗ですよね〜」と言う。
そうして男性は、自分とは反対方向へ歩いていく。ほんの一瞬の会話であったが、とても心地良いものであった。

引き続き、素晴らしい日本海側の景色を堪能しながら歩く。

トンネルに入り、歩道を歩いていると遭遇したぺしゃんこの空き缶。
トンネル「で見た、す」ごく薄い空き缶。
“最高峰のコク”の「ク」が隠れてしまっている。これぞ、ク折れてー(クオリティー)が高い。

風が強い時は波が海側の歩道まで来るのであろう。自然の力はとにかくすごい。

そうしてひたすら心地よい気分で歩いて行く。

一旦萩市から出て、また萩市に入るという地理なのであろうか。萩市を再訪。

青梅が道端に転がっている。梅好きとしては気になる。

頭上に梅の木。道路脇に梅の木が自生しているとは、なんと恵まれた環境なのでろう。

目の前の茂みを見ていると、幼虫さんがいた。なんか可愛い。

海辺にはキャンプ場などもあり、とても楽しそうである。

神社にて参拝をさせていただく。歴史を感じる神社である。

須佐駅の前を通る。ご当地アニメキャラであろうか、看板が立っていた。

駅の横には観光協会の物産売り場があり、何が売られているのか気になったので入ってみる。
竹の子の梅酢漬けが売られていたので、気になり購入してみた。

色々と近辺の観光情報が書かれている。だが歩き旅であるので、それらには寄らずにそのまま出雲へ向けて足を進める。

ホルンフェルスという場所まで4km。車ではあっという間であろうが、徒歩だと1時間弱かかるので寄らずにそのまま歩く。

気温が26℃とのことであり汗はかくが、暑すぎるということもない。
気温の上のモールス信号は読み解けず、そのまま進む。
もう少し歩けば温泉もあるキャンプ場があるので、今日はそこを目指して歩いて行く。

途中スーパーがあり、有難くこちらで食料を確保させていただくこととした。

そうして温泉のあるキャンプ場までもうすぐのところまで来た。
日が暮れる前にテントを張れる場所まで到着できるのは、とても幸せなことである。

そうして川沿いを温泉まで歩いていると、いきなり町内放送のスピーカーからラジオ体操がかかり出した。
時刻も15時半という、朝でもない時間なので不思議であったが、ちょうどお昼寝をしたくなるくらいの時間にラジオ体操で体を動かすのは健康に良いことなのではないかと思った。

そうしてキャンプ場に到着。早めに身体を休ませることができるのは最高である。
テント場を見るとテントを張っている先客が一組。家族連れのようで父親が息子さんと芝生の上で遊んでいた。

テント場の横にはキャンプ場の受付兼温泉施設があり、こちらキャンプの受付をする。
なんとソロテントは500円で張らせていただけた。

とてもきれいな炊事場であり、管理がしっかりと行き届いている。

テントサイトがとても広い。のんびりとした環境で、ここには温泉施設があり、道の駅もすぐ近くにある。週末はとても賑わうのではなかろうか。

こんなに広いテントサイトなのに、とても端にテントを張る。人目を避けたいとかではなく、今日も風は少しだけ強めであり、昨晩の経験からできるだけ風の影響を受けない場所に張りたいと思ったからである。

そうしてテントを張り晩御飯にありつく。しっかりと歩いてお腹が減った後に食べるご飯はとにかく美味しい。至福のひと時である。
お気に入りの国産大豆の豆腐はやはり美味しい。観光協会で購入した竹の子の梅漬けも、たけのこの食感と風味が素晴らしく、シソと梅酢が程よく疲れた体に効く。
味付け卵も、卵自体も美味しく漬け汁の味も少し甘めでこれまた美味しい。

こうしてまだ外が暗くないうちに美味しいご飯の時間を過ごした。
この空腹時にご馳走を味わう多幸感を感じる為に歩いているのだと言っても過言である。
それは言い過ぎだが、それほど幸福感が大きいのも確かである。

そうして美味しい夕食を満喫した後で温泉施設へと行き、しっかりと身体を労わることとした。
温泉もとても気持ちよく、露天風呂でかかっていたスローテンポのオルゴール的な音楽もまた心を癒してくれる。
今日は早めにテントを張ることができたので、ゆっくりと温泉に浸かった。
そうして温泉から上がった後は、休憩室でしばし横になり体を休めながら、できるだけ日記を書き進める。
そして晩御飯の摂取塩分量が高かったのであろうか、温泉に浸かっていた時間が長かったからであろうか、休憩中はとても喉が渇いたので自販機でキンキンに冷えたevianを2本も飲んでしまった。
とても贅沢ではあるが、満たされた気分となった。

そうして暗くなってからテントへと戻り、心地よい気分で寝袋に潜り込み床に就いた。
新たな人との出会いがあり、今日はとても充実した1日となった。

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